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上昌広医療ガバナンス研究所 理事長

1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。

五輪「入場制限」国民や選手への配慮が皆無、専門家も科学を置き去りにしている

公開日: 更新日:

 東京五輪の概要が明らかになりつつある。大会組織委員会は収容定員の5割以内、上限1万人で観客を入れるそうだ。

 専門家は反対している。6月18日、尾身茂新型コロナ感染症対策分科会会長ら26人が連名で、無観客が望ましいなどの提言をまとめた。同22日、朝日新聞は「五輪の観客 科学置き去りの独善だ」という社説を掲載し、彼らを支持する。

 私は一連のやりとりに違和感を抱く。それは国民や選手への配慮が皆無だからだ。特に問題なのは、政府だけでなく、「専門家」も科学を置き去りにしていることだ。

 例えば、無観客についての見解だ。屋内と屋外では感染リスクは異なる。こここそ、観客を入れる際のポイントだが、「専門家」は取り上げない。私は悪質と感じる。

 実は、このことは、流行当初からのコンセンサスだ。昨年4月には、中国の東南大学の研究者たちが7324例の感染者の記録を調べ、屋外感染は1例だけだったと報告している。これは同10月30日から3日間にわたって横浜スタジアムで入場制限を緩和したが、クラスターは発生しなかったという実証研究の成果とも合致する。野球サッカーのような屋外競技はもちろん、パブリックビューイングも、会話を控え、社会的距離を取れば、無観客にする必要はない。

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