五輪観戦帰りに“密”発生確実 これが有観客で激ヤバの8会場
「無観客が望ましい」――。専門家有志の提言もむなしく、政府やIOC(国際オリンピック委員会)などの5者協議が21日、東京五輪の有観客開催を決定。観客数は「上限1万人」と感染拡大リスクは爆騰だが、菅首相や大会組織委員会が掲げる対策内容が「競技会場に直行直帰すべし」とはふるっている。明らかに逆効果で“密”を誘発するのは確実だ。
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「『直行直帰』には、首をかしげざるを得ません」と、ある大会関係者はこう続けた。
「会場に向かう際はともかく、問題は『帰り道』。競技によっては終了時刻が夜11時過ぎになる。観客は終了後、席ブロックごとに時間をかけて順番に退場。すると、頭に『終電』がチラつく観客が、ドタバタと最寄り駅に大挙し“密”ができる恐れがあります」
確かに3オン3のバスケットボールやサッカーなど6競技のうち一部の日程で、終了予定時刻は午前0時近くになる。国立競技場で行われる開閉会式も夜11時終了予定で、全8会場が深夜まで使われることになる(別表)。
良い子は眠る時間に終わるのは、時差のある欧米メディアの生中継への配慮。選手や観客より高い放映権料が優先される金満五輪の証左だ。そのため、昨年の延期以前には大会期間中の首都圏鉄道の終電時間は1~2時間後ろ倒しになる計画で「有観客が決まり、改めて終電が後ろ倒しになるのは確実」(前出の関係者)という。
小池都知事は「8時だョ! みんな帰ろう」とか訴えていたクセに、五輪観客だけは“特別扱い”とは自家撞着の二重基準だ。
いずれにせよ、夜中の観戦でヘトヘトになった観客が、大慌てで帰途を急ぐのは想像に難くない。駅ナカや電車などでも“密”が発生するだろう。
1万人がシャトルバスで移動
激ヤバは、サッカー会場の「埼玉スタジアム2002」だ。8月3日の男子準決勝の終了予定は夜11時。徒歩圏内に鉄道駅がひとつもないため、シャトルバスで埼玉高速鉄道「浦和美園駅」など4駅にアクセスすることになる。観客は上限いっぱいの1万人。バス車内の“密”確率は100%だ。
バレーボール会場の「有明アリーナ」では7月24日から12日間は連日夜11時半終了予定。8月7日はナント、夜11時45分まで競技を行う見込みだ。アクセス手段は車両、駅ホームともに小規模な「ゆりかもめ」。ただでさえ狭い車両は“密”必至だ。
一般客の他、IOCや競技関係者など計2万人が来場予定の開閉会式を行う国立競技場の周辺は、駅が複数あるものの、道のりや構内で“密”ができるだろう。周辺には時短破りの飲食店も目立ち、腹をすかせた客が殺到しないか心配だ。
「人流の制御に理想的なのは、スタジアムが公共交通機関の『終点』に立地していること。国内では西武狭山線終点にある西武ドームが好例です。しかし、国立代々木競技場などは都心にあったり、多くの会場は臨海部の鉄道沿線に『点在』するなど、もともと人流を把握しづらい。ましてやコロナ禍では、観客の人流制御は難しい。菅首相や組織委幹部は簡単に『有観客』と言いますが、実態が分かっていないのではないか。極めて場当たり的です」(五輪会場問題に詳しい建築エコノミストの森山高至氏)
黒塗りハイヤーで常に移動する“上級国民”には一般庶民の交通事情など分かるまい。