「トウモロコシの歴史」マイケル・オーウェン・ジョーンズ著 元村まゆ訳

公開日: 更新日:

 いまから約400年前の1620年11月21日、イングランドのプリマス港を出港したメイフラワー号はアメリカ東海岸のケープコッドに到着した。乗員の102人はイギリス国教会の弾圧を逃れた清教徒たちで、ピルグリム・ファーザーズとして歴史に名を残している。

 しかし希望の地であったはずの新天地は、上陸早々過酷な現実を突きつけた。彼らが持参したキャベツ、タマネギといった種子がこの地には根づかず、飢餓に襲われたのだ。翌年夏までに102人のうち生き残ったのは半数に過ぎなかった。この危機を救ったのが、先住民が「メイズ」と呼んでいたトウモロコシで、現在でもアメリカは長きにわたって最大生産国の地位を保っている。

 本書は、9000年前にメソアメリカで生まれたトウモロコシが、コロンブスに始まる大航海時代にヨーロッパ、アジア、アフリカに広まっていく経緯をたどるとともに多彩な調理法などを紹介している。現在サハラ以南アフリカと中南米に暮らす12億人の主食になっているが、それ以外にも家畜飼料、コーン油、さらには接着剤、爆薬、塗料、防腐剤などの工業製品にも用いられ、現代社会に欠かせない貴重な穀物。

 実は、野生では生育できないトウモロコシの起源に関しては不明な点が多く、なかには地球外の知的生命体がもたらしたものだという仮説もあるほどだ。

 ともあれ、海抜ゼロ~3360メートル、北緯50度~南緯50度という広域で栽培可能、年間降雨量250ミリ以下でも1万ミリ以上でも生育できるという優れものであるトウモロコシの魅力がたっぷり詰まった一冊。なかでも、本書に登場するさまざまな調理法は、茹でるか焼くかが主である日本人にとっては珍しいものばかり。レシピもついているのでお試しあれ。<狸>

(原書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 2

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 3

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  4. 4

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  5. 5

    「クスリのアオキ」は売上高の5割がフード…新規出店に加え地場スーパーのM&Aで規模拡大

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  3. 8

    189cmの阿部寛「キャスター」が好発進 日本も男女高身長俳優がドラマを席巻する時代に

  4. 9

    PL学園の選手はなぜ胸に手を当て、なんとつぶやいていたのか…強力打線と強靭メンタルの秘密

  5. 10

    悪質犯罪で逮捕!大商大・冨山監督の素性と大学球界の闇…中古車販売、犬のブリーダー、一口馬主