「ライプツィヒの犬」乾緑郎著
劇作家の岳は、文化庁の海外研修で渡欧し、東ドイツ出身の世界的な劇作家ギジに劇作を学ぶ。かつてシェークスピアを翻案した反体制劇で一躍名声を得たギジの30年ぶりの新作は、「ロミオとジュリエット」をベースにした「R/J」とタイトルだけ発表されていた。
新作と並行してギジ演出によるロミオとジュリエットも上演されることになり、稽古が進む。しかし、新作の台本が上がらぬまま公開稽古の日を迎えてしまう。その公演中、小道具のナイフが本物にすり替わり女優が大けがを負う。その日以来ギジも姿を消してしまう。混乱の中、岳は研究者の桐山からギジが東ドイツ時代にシュタージ(秘密警察)に協力する密告者だった可能性があると聞く。
演劇界を舞台に描く長編ミステリー。
(祥伝社 760円+税)