レコード会社11社が競作 「山口さんちのツトム君」
<1976年6月>
前年暮れにリリースされ、76年上半期、爆発的なヒットになった「およげ!たいやきくん」の熱気がようやく冷め、レコード会社各社は次のターゲットを探していた。
「童謡が今の売れ線とばかり、二匹目のドジョウを狙い、どこも必死になって子ども番組に流れる曲を漁っていた」と振り返るのはレコード会社の元社員。そんな時に各社が注目したのが4~5月にNHK「みんなのうた」で流れていた「山口さんちのツトム君」だった。
「♪山口さんちのツトム君、このごろ少し変よ」で始まるこの曲、途中の「つまんないナァ」というフレーズが受け、NHKに問い合わせが殺到していた。作詞作曲はシンガー・ソングライターのみなみらんぼう。道を歩いていたら、6歳ぐらいの女の子が一軒の家の前で「遊ぼうよ」と呼びかけている。中から「あとで」と男の子の声。すると、女の子は
「つまんないな」とつぶやいて帰っていった。この場面にたまたま出くわしたみなみは自身の幼少時代のことがよみがえり、即興で詞とメロディーを口ずさんでいたという。