「オレは誰が相手でも芝居は同じ」とも感じられる演技だ。また、「食べる演技」が上手な高倉健を相手にして、三木のり平は軽々とそれを超えてしまう。三木のり平のおでんの食べ方、酒の飲み方、水っぱなをすすり上げる動作、すべてが、屋台の客そのものである。一方、高倉健は三木のり平の演技にあっけにとられている感じである。
食べている途中、雪が降り出して、ふたりが暖簾を分けて、「おー、雪だぜ」とつぶやくカットがある。このカットは美しい絵だ。映画というよりも、一幅の絵となっている。「あ・うん」は高倉健が演技で三木のり平に完敗した映画であり、しかも、絵画として通用するカットを持った映画だ。