認知症の老母がさまよい歩く「徘徊 ママリン87歳の夏」の衝撃
認知症を患った老母と、その面倒をみる娘の奮闘記が話題になっている。「徘徊 ママリン87歳の夏」である。大阪市に住む酒井アサヨさんは87歳。娘・章子さん(55)と同居を始めて6年になるが、娘を他人と思い、「ここ、刑務所やろ?」「もう帰ります」と出て行こうとする。
実際、アサヨさんはひとりで徘徊することも頻繁で、これまでの家出回数は1388回、徘徊時間は1730時間。お世話になった警察は31カ所に及ぶ。ひとりで出歩くアサヨさんを娘とカメラが追跡。母が郵便ポストと会話するシーンなど、認知症患者とその家族の苦労を体感できる内容だ。
映画評論家の山根貞男氏が言う。
「田中幸夫監督は膨大な量の映像を撮り、お母さんがカメラを見るシーンをすべて外したのでしょう。女優2人が演技をしている劇映画ではないかと錯覚するほど見応えがある作品になりました。明るさを失わず、お母さんと会話しようとする娘さんは実に立派です」
母が娘に罵声を浴びせるシーンも盛り込まれ、認知症問題の実態がうかがえる問題作。9月26日、新宿「K's cinema」、横浜「ジャック&ベティ」で公開予定だ。