トップセールスマン捨て噺家に 桂宮治を支えた糟糠の妻
デビュー10年目。今もっとも元気のいい二ツ目のひとりが桂宮治さん(40)。前職は化粧品業界屈指のトップセールスマン。それを捨てて、落語界に転じたのだが……。
◇ ◇ ◇
「やめたほうがいいよ。貧乏だよ。夢とかないよ」
「でも、僕、仕事辞めてきました」
「うわぁ。辞めちゃったの……?」
今から9年前、2008年1月のことでした。うちの師匠(桂伸治)に入門のお願いをした時のことです。そう簡単に認められるとは思っていませんでしたけど、師匠は「甘い世界じゃないよ」と現実を諭してくれました。当時、31歳。結婚した直後でしたから、余計に心配してくださった。
僕はいわゆる遅咲きでして、落語を知ったのがその前年。たまたまユーチューブで桂枝雀師匠(故人)演じる「上燗屋」を見て「これだ!」って。
というのは当時、化粧品の店頭販売セールスマンをしていたんですが、仕事が嫌になってて転職を考えてましてね。