骨折した猿之助の代役を全う 尾上右近“スター誕生”の瞬間
スター誕生だ。市川猿之助が公演中に負傷し、新橋演舞場の10月公演「ワンピース」を休演したが、その代役の尾上右近が素晴らしい。歴史的瞬間だ。
「ワンピース」はいうまでもなく人気コミックの劇化で、2015年に猿之助が「スーパー歌舞伎Ⅱ」として上演し大ヒットした(横内謙介脚本・演出、市川猿之助演出)。その再演にあたり、もともと3日のうち1回は昼の部で右近が主演することになっていた。これは若手を育てなければとの思いから、猿之助が松竹と交渉して実現したものだという。だから急な代役で右近は見事に務めたのだが、猿之助の構想が、思わぬ形で素晴らしい結果を出した。
右近は今年25歳。テレビに出る機会が少ないので、一般的知名度は低いだろうが、大正から戦後にかけての名優、6代目尾上菊五郎のひ孫にあたり、父は清元延寿太夫、母方の祖父は鶴田浩二という血筋だ。尾上菊五郎のもとで修業し、主に女形で舞台に出ている。
今回の「ワンピース」でも、主人公のルフィと2役で、若き女帝ハンコックも演じている。今回の代役を機会に飛躍するだろう。