骨折した猿之助の代役を全う 尾上右近“スター誕生”の瞬間

公開日: 更新日:

 右近の他、中村隼人、坂東巳之助、坂東新悟たち平成生まれが活躍。若いと思っていた猿之助も彼らと比べると、もう若くない。それを自覚し、自分よりも若い世代を育てる――つまり舞台で主役を経験させるのは、言うは簡単だが、なかなかできることではない。猿之助の決断と、若手の力を見抜く慧眼に拍手だ。

 歌舞伎座も負けていない。尾上菊之助主演で、インドの神話的叙事詩を原作にした新作歌舞伎「マハーバーラタ戦記」(青木豪脚本、宮城聰演出)。菊之助が企画した大作だ。菊五郎、左團次たちベテランは脇に下がり、菊之助、尾上松也中村七之助、坂東彦三郎、坂東亀蔵ら若手が主要人物を演じる。

 なかでも尾上松也が際立つ。菊之助が優等生的なヒーローを演じたのに対し、松也はその敵役で、悪人だが、彼にも彼なりの正義があるという複雑なキャラクターをうまく演じた。松也は大河ドラマでも今川氏真を好演しているが、歌舞伎座でも十分に主役級が務まるようになった。

 菊五郎劇団の若手が目立つ10月だ。 

(作家・中川右介)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動