リリーのすべて(2015年・英国)
20世紀初頭、世界初の性別適合手術を受けた男性の実話を映画化した。
画家アイナーは、同じく画家の妻ゲルダにストッキングをはいた女性モデルを要望される。それを機に自分の中で眠っていた真の人格に目覚め、女性“リリー”として生きることを決意する。婦人用のひらひらしたナイトガウンを着て寝ようとする夫に、妻は動揺。そんな妻に夫が吐露した言葉だ。
ペニスを股間に挟み、女性みたいなポーズで鏡の前に立つ。子供の頃にやったことがあるであろうポーズを、若手演技派エディ・レッドメインが女性として目覚めていく過程を丁寧に演じている。本当にLGBT(トランスジェンダー)ではないかと思わせるほど、役に入り込んでいて危険な美しさにクラクラする。
正直に生きようとする主人公を最初は困惑しながら、最後まで献身的に支える妻を美人女優アリシア・ビキャンデルが演じる。アカデミー助演女優賞を獲得するのも納得の好演で、熱くなるのが分かる。
周囲に理解されずとも妻と友人だけには理解され、懸命に生き抜いたLGBTの愛の物語。異色のラブストーリーは、映像も美しく、最後まで不思議と引き込まれていく。家族や知人がLGBTだったら、どうするか。対処法が分かる一本だ。