著者のコラム一覧
中川右介

1960年東京生まれ、早大第二文学部卒業。出版社「アルファベータ」代表取締役編集長を経て、歴史に新しい光をあてる独自の執筆スタイルでクラシック音楽、歌舞伎、映画など幅広い分野で執筆活動を行っている。近著は「月9 101のラブストーリー」(幻冬舎新書)、「SMAPと平成」(朝日新書)など。

曲と声優を担当 ジブリ映画「紅の豚」で残した強烈な印象

公開日: 更新日:

 歌手の多くが映画・テレビドラマに出演し、名演技を見せる。加藤登紀子も1983年に映画「居酒屋兆治」(降旗康男監督)に高倉健の妻の役で出演した。女優なら誰もが憧れる「健さんの妻」の役をあっさりと射止めてしまうところに、加藤の強運を感じる。

 アニメ映画でも1作だけで強烈な印象を残している。92年のジブリアニメ「紅の豚」(宮崎駿監督)だ。

 1920年代のイタリアを舞台にした作品で、加藤はホテル経営者で歌手でもあるジーナを演じ、劇中で「さくらんぼの実る頃」を歌い、さらにエンディングでは彼女の「時には昔の話を」が流れる。「紅の豚」は宮崎アニメでは珍しい「大人の世界」を描いた作品だが、加藤の声と歌が果たした役割は大きい。

「さくらんぼの実る頃」はアニメの舞台からさらに50年前の1871年のフランスの市民による自治政府パリ・コミューンと密接な関係のある歌だ。作られたのはコミューンの5年前の66年で、失恋し、その昔の恋を懐かしむ歌だ。政治的な言葉はまったく出てこないが、失恋と過ぎ去った楽しかった日々への思いが、コミューンが弾圧された後の人々の絶望感、喪失感と共鳴して広く歌われるようになった。

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