24年ぶり上演も…現代の歌舞伎で幽霊モノは通用しないのか
夜の部の「巷談宵宮雨」は、宇野信夫が昭和10(1935)年に六代目菊五郎のために書いたものだ。六代目の芸は息子七代目梅幸、芸養子二代目松緑、女婿十七代目勘三郎の3人が継承したが、「巷談宵宮雨」は勘三郎だけが何度も演じた。いずれは18代目勘三郎も演じたであろうが、亡くなってしまった。今回は義理の弟である中村芝翫(写真)が初役でつとめた。芝翫の父・七代目芝翫は若い頃に六代目菊五郎のもとで修業していたので、そういうつながりもある。初役なのに、自分のものにしていた。
芝翫と尾上松緑、中村雀右衛門の3人が主役で、前半は喜劇仕立てで笑わせ、最後は幽霊の出てくる怪談となる。しかし、怪談になっても客席は笑いに包まれていた。いまの観客には、幽霊は怖くないのだ。芝翫が幽霊になって出て、雀右衛門が怖がると、笑ってしまう。これは役者のせいではない。幽霊の話が怪談として成立しないのが現代なのだ。面白い芝居なので、今後も上演してほしい。
(作家・中川右介)