「てんとう虫のサンバ」…お遊びの曲が大ヒットで紅白に
一方私は、71年5月にバンドを解散。大学を卒業後、ビクターに“ディレクター見習い”として潜り込みました。ディレクターデビューは72年に果たしていましたが、ヒットはなし。そんな時、チェリッシュを担当していた先輩から「2人組になったのを機に、おまえがやれ」と半ば業務命令。それで73年1月発売の「若草の髪かざり」から私が担当することになったのです。
当時のチェリッシュはアルバムがよく売れていたので、オリジナルアルバムを作ろうということになり、その中のひとつとして収録したのが「てんとう虫のサンバ」です。3年前に森山加代子さんが歌った「白い蝶のサンバ」がヒントになりました。シングル化するつもりは全くのゼロ。
ところが、アルバムのサンプル盤を聴いた大阪のラジオ局のディレクターが「てんとう虫のサンバ」を気に入ってくれて、番組でかけてくれたところ問い合わせが殺到。有線のリクエストにも上がってくるようになり、急きょシングルカットしたのです。
当時、僕もチェリッシュも「えっ!?」と目が点になりました。僕はシングル用に作っていないし、彼らもアーティスティックに売りたい時に「あなたと私が夢の国~」でしょ(笑い)。でも結果的に大ヒット。その年の紅白歌合戦に初出場も果たしました。
いまだにどうして売れたのか分かりませんが、当時のリスナーの耳に残ったのは確か。ヒット曲はユーザーが決めるという典型的な例ですね。
(聞き手=いからしひろき)