「自由」と「平等」について、改めて考えさせられた
でも、もの足りない年明けではなかった。暮れに、カンボジアのロケ撮影の合間に、かねて行きたかった場所へ。首都プノンペンから300キロ離れたアンコールワット遺跡に行くほど暇じゃなくても、その場所にはどうしても立ってみたかったのは、郊外の村の中にある「チュンエク大量虐殺センター」だ。1975年から79年にかけて、首都に侵攻したクメール・ルージュ(赤いクメール)というポル・ポトが率いる共産主義独裁勢力が都市の資本家や知識階級から学校教師、科学者、技術者、労働者、音楽家まですべてのブルジョア階級たちを片っ端から殺して埋めた場所だ。宗教を禁止し、一切の私財を没収して、「階級のない完全共産主義」を目指す大虐殺があった。反抗する者がいなくなるまで殺害は続いた。大量埋葬跡地の横に慰霊塔が立ち、掘り起こされた何千体もの頭蓋骨が安置されていた。ヘッドホンから流れるガイドアナウンスにため息をついた。ため息しか出なかった。
平成時代に生まれた若者は「赤いクメール」なんて知ってるだろうか。東京ドームに「Hey!Say!JUMP」を見に行くより、この地に行ってきたらどうだ。「自由」と「平等」について、改めて考えさせられた正月だった。