真の「カメレオン俳優」は現場の空気で存在感を変えられる
前々回〈役名で覚えられる人でありたい〉などと書きましたが、最近もっぱら「“しゃべくり”に出てた人」と呼ばれるようになり、だったらいっそ本名で覚えてもらいたいと思わないでもない複雑なお年頃、小手伸也です。
先日、とあるインタビューの現場で、僕の役柄の振り幅をして「カメレオン俳優」と評していただいたことがありまして、それは「役によって印象がガラリと変わる俳優」に対する賛辞の王道として、大変に光栄なことではあるんですが、そもそもいろんな役ができるというのは俳優として当然のスキルであり、その上で特に「カメレオン」と評される意味とは何か……そこにちょっと引っかかるといいますか、実はその定義について個人的にモヤッとしていたんです。が、つい最近その答えの一端が遠藤憲一さんにあると気付きました。
エンケンさんが多彩な演じわけのできる方というのは周知の事実なわけですが、今回改めて「私のおじさん」で共演させていただき、一番感じたのは「とても合わせ上手な方」ということでした。現場では何の壁も上下もなく、むしろ若輩の僕らの輪の中で違和感すら抱かせることなく雰囲気を共有し、「気のいいオジサン」として僕らを和ませてくれます。