労働時間を規制されてしまってはロクな作品が生まれない
GWの10連休などどこ吹く風のように、我らは新作映画の仕上げ作業でダビングスタジオに日参していた。無駄なカネを使うこともなく、好きなことに没頭できたのがよかった。しかし、世の中、昔と変わってしまって、「働き方改革」という厄介な一般労働システムにこっちまで迎合しなければならないのが一番、しゃくに障った。
元来、映画屋なんていう特殊な職種は、9時から5時まで労働なんてものとは何の関わりもなかったのに、それがそうもいかなくなっていて、スタジオに常勤するサウンドエンジニアたちだけは新たに改革された定時間労働を順守せざるを得ず、時間に何の規定も制約もなかった我らフリーランスの映画人が、スタジオのサラリーマン的な拘束時間に合わせてやらなければならなくなり「よっし、今夜は終電もヘチマもないぞ。牛丼食って夜明けまで頑張ろうぜ」とはいかなくなってしまったのだ。
映画人やミュージシャンに“働き方改革”は通用するわけがない。労働時間を規制されてしまってはロクな作品が生まれやしないのだ。スタジオに常勤する月給スタッフに合わせなければならない理不尽な改革こそ、明日の日本映画をダメにしてしまうのだ。いや、人間をダメにしてしまう。誰にでも働き方を押しつけるな。生き方まで変えさせられてはたまったもんじゃないのだ。今までに、徹夜作業を続けて自殺した映画人は聞いたことがない。