紙切りは世界中の老若男女どんな世代にも喜ばれる演芸です
正楽は一度、紙切りができなくなるかもしれない危機に陥ったことがある。13年前の秋、公演先の北海道旭川市で高座に上がっている最中、くも膜下出血の発作に襲われたのだ。
「頭の中でドカーンと花火が破裂した感じでね。高座を降りてすぐ、近くの病院に行ったら、くも膜下出血と診断されて、脳神経外科がある大病院に緊急搬送された。ついてたのは、そこに脳神経外科では名医といわれる医師が教えに来てて、その先生が手術してくれたんです。この病気はおおよそ3分の1が亡くなり、3分の1が後遺症が残って、3分の1がリハビリの必要がないほど回復する。あたしは最後の3分の1だった。いい場所で、いいタイミングで発作が出たおかげですね」
なにせ紙切りは手先の微妙な動きに左右されるので、しびれなどの後遺症が出ることを周囲は心配した。それがリハビリなしですぐ高座復帰したから、ほっとしたものだ。その後は以前と同じように高座に上がり続け、今や色物の大看板である。
最後に、寄席における色物の役割について伺った。
「色物は落語家の邪魔にならないようにしなければいけません。あくまでもメインの落語を引き立てるのが役目ですから。ただ、カッコ良くなくっちゃいけない。あと、うちの師匠は、『品が良くなくてはいけない』と言ってました。そういったことを常に心掛けてます」