時事ネタ注文多く…紙切りほど世相がわかる寄席芸はない
1998年7月2日、2代目正楽が亡くなる。享年62だから早過ぎる死だ。2代目は生前、後継者に小正楽を指名していた。
「師匠には2人の息子さんがいまして、長男を落語芸術協会の先代桂小南師匠に預けたところ、紙切りより落語のほうが面白くなって落語家になっちゃった。それが当代小南です。次男は当時、芸人にならないって言ってた。それで師匠はあたしに正楽を継がせることにしたのだと思います。それが決まってから、次男が紙切りをやる気になった。今の二楽です」
たとえ二楽が早く弟子入りしていたとしても、師匠は小正楽に襲名させたはずと私は思う。
2代目正楽が没して2年後の2000年9月、小正楽は3代目正楽を襲名する。各寄席で40日間の襲名披露興行が催され、連日トリを務めた。色物芸人が寄席でトリを取るのは異例のことで、落語協会では51年ぶりだとか。
「前にトリを取ったのが誰だったのか、あたしも知りません。知ってる人がいないくらい昔のことで、それだけ異例ということなんでしょう。寄席のトリは落語家と決まってますからね。でも、それはあたし個人の力ではなく、紙切りという芸が寄席のお客さまに評価されたからだと思ってます。初代と2代目正楽の功績だって」