「レニ」ヒトラーに協力した女が見せる恥知らずの抗弁
老いたレニはナチと政治的な関わりを持たなかったと言い張るが、実はドイツ軍がパリを陥落させた40年6月、勝利を絶賛する電報をヒトラーに送り、その文書は現存している。この事実にレニはどう答えるのか。76年にテレビに出演してナチへの協力者と批判されたとき、どう言い訳したのか――。こうした追及に抗弁するレニの堂々たる態度は実に興味深い。
彼女は2003年に101歳で死去。ナチの映画を撮りヒトラーを崇拝したのは過ちだったと認めながら、一度も謝罪しなかった。生まれつき良心の呵責から最も遠いところに位置する人間性だったのだろう。
「意志の勝利」はヒトラーが親衛隊と突撃隊を従え、民衆の熱狂的な支持によって神格化される演出が施されている。人々を見下ろすヒトラーと右手を差し出して下からあがめる民衆。催眠術のような映像を見ているうちに先週火曜の天皇と総理大臣の位置関係が脳裏に浮かび、自分が「赤子」であることを思い知らされたのだった。
(森田健司/日刊ゲンダイ)