「チャーリー」世界笑わせた喜劇王の人生につきまとう悲劇
チャーリー(1992年 リチャード・アッテンボロー監督)
志村けんが急死し、テレビ各局が追悼番組を放送した。録画しておいたそれらの映像を巣ごもり生活の中で見ているうちに本作を思い出した。チャーリー・チャップリンは志村けんが尊敬する喜劇人の一人だったという。彼の人生はアメリカ現代史の裏返しだ。
チャップリン((ロバート・ダウニー・Jr)は1989年にロンドンで生まれた英国人。若いころ劇場のパントマイムに出演し、やがて米国ハリウッドに招かれる。彼は独特のメークと動作を考案して数々のヒット作を送り出すが、幾度もの試練を受け、ついには米国政府によって国外に追放されるのだった……。
映画はアンソニー・ホプキンス演じる記者がスイスに住む晩年のチャップリンをインタビューする場面を差し挟んで進行する。ただ、ホプキンスは通り一遍の質問をする狂言回しにすぎない。「羊たちの沈黙」(91年)でクラリスを追い詰めたレクターの迫力があれば、物語はもっと深みのあるものになっただろう。R・アッテンボロー監督もそのことに反省の弁を述べている。
それでも本作が面白いのは喜劇王チャップリンの表の顔だけでなく、裏の顔も“暴露”しているからだ。表の顔は移民や障害者に優しいチャップリンの映画づくりと彼の天才的な才能。裏の顔は彼の実母が精神を病んで長らく入院し、退院後も奇行をくり返したこと。有名なチャップリンのロリコン性癖も包み隠さず描いている。