自分より相手の反応を優先させる 渡辺謙の「お笑い魂」
渡辺のお笑い好きは付け焼き刃などでは決してない。何しろ、自分の一番古い記憶が小学3年生のときのお別れ会で、みんなの前で落語を披露したことだという。しかも、それは“新作落語”。当時よく読んでいた落語全集を手本に、北海道を題材にした落語を自ら作ったのだ(紅屋オフセット「ゴールデンライフ」20年3月号)。
英語がほとんどしゃべれない状態で「ラストサムライ」に出演し、ハリウッド進出を果たした「世界のケン・ワタナベ」。今では英語でもインタビューを受けているが、そんなときでも「とにかくウケたい。相手を笑わせたいんです」(アルク「ENGLISH JOURNAL」19年11月号)と言う。
「英語、日本語にかかわらず、ユーモアって大事。言葉の選び方だけでなく、間の取り方や機転の利かせ方を、いつも考えています」(同前)と。それこそが、渡辺が国境も越えて幅広い役柄を求められる理由のひとつだろう。
渡辺は役柄へのこだわりはないという。今後やりたい役を問われても「ない」と繰り返している。冒頭の番組でも「自分がこうなりたいとか自分がこうしたいっていうよりも、人が『あいつをこうしてやりたい』っていう方が、よっぽど面白いことがいっぱいあった」と語っている。