「スーパーJOCKEY」で一世一代の骨折覚悟の神業に挑んだ
その極真空手の達人、松井章圭(後に株式会社国際空手道連盟極真会館を設立)をはじめ極真空手の猛者数人が我々のその日の先生であった。
空手の形から始まり、組手に板や瓦割りと収録が進むのとともにたけし軍団の面々は満身創痍のズタボロになっていくのだった。そして、迎えた最後の挑戦……それは上下の面が縦横30センチほど、そして高さ1メートルくらいの立方体の氷柱を片手の拳一つで真っ二つに叩き割る(折る)という50年インドの山奥で特訓を重ねようが50年滝に打たれる修行をしようが、決してたどり着けないであろう神業であったのだ。
そして、それにチャレンジすべく選ばれた者は、な、なんとこの俺であった。名を呼ばれた瞬間「ゴキッ!」と手首の折れる音が予告編のように耳の中に響いていた……その耳元に囁く松井さんの声「精神を集中するんです! 自分を信じるんです!!」、ヤダー! 自分なんてこの世でもっとも信じられない~!! と心の中で叫びながらも精神を氷柱の一点のみに集中して手を力いっぱい振り下ろす俺……ボキッと手首が……いや、氷柱が真ん中からまるでスローモーションのように折れ、崩れていったのだった……。一瞬静寂に包まれたスタジオが次の瞬間歓喜の渦となり、その場で松井さんから極真名誉黒帯まで認定されたのだった。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」じゃないけど、アントニオ猪木さんの「元気を出せば何でもできる!!」じゃないけど、人間の精神の力を身をもって知ったのだった。
(つづく)