「若いうちは積極的に自分からやっていかんとあかん」
浪曲師になってみて、どうだったのか。
「下手は下手なりに、新しい節の工夫をすると、それがお客さまに伝わって、喜んでいただけることもあります。やりがいがありますね」
幸枝若が毎回東京に連れてくるのは、それだけ期待しているからだろう。私は5年前から幸太を見ている。当初は、初々しいけれど拙さがあった。それが見るたびに成長している。
「師匠と一緒の会は、舞台袖で師匠の出し物を聴けるのが勉強になりますし、自分の浪曲を聴いて下さって、『あそこはこうしたほうがいい』と直してくれたり、アドバイスをいただけるのがありがたいです」
そんな幸太を見る幸枝若のまなざしは、厳しい中にも優しさがある。
「若いうちは、勉強会でもなんでも、積極的に自分からやっていかんとあかんのですわ。この子は自分で会の場所を探してきて、チラシを作って頑張ってる。まあ、これからも『古典をしっかりやれ』ということですな」
幸枝若と幸太の浪曲を東京で聴けるのは、11月の独演会まで待たなくてはいけないが、その折はぜひとも木馬亭まで足を運んでいただきたい。
(聞き手・吉川潮)