「若いうちは積極的に自分からやっていかんとあかん」
幸枝若が会長を務める浪曲親友協会の会員は30人程度で、会長としては後進の育成も考えねばならない。幸枝若の門下には、京山幸太という26歳の弟子がいて、東京での独演会には、毎回必ず「前読み」と言われる前座を務めている。今回のインタビューにも同席してもらった。
「この子は私が教えている浪曲教室に来て、弟子になりたいと言ってきたんです。半年の見習い期間のうちに左甚五郎ものの『知恩院』を覚えてこいと言ったら、ちゃんと覚えてきた。基本のオツ(低音)の声をきっちり教えてます。淀川の河原で毎日4時間、ひとりで稽古するような熱心な子なんです」
幸太に弟子入りの動機を聞いた。
「もともと音楽をやってまして、師匠が浪曲教室で教えているのを聴いて、まず声と節、タンカ(語り)が音としてすてきだと思いました」
若者にとって、浪曲は古くさいというイメージがなかったのだろうか。
「それはありませんでした。なにせ浪曲で多くやられてる忠臣蔵さえ知らない世代ですから、逆に節が新鮮なメロディーとして耳に入りました」