ネタにダメ出しするも…麒麟はアドバイスを聞く耳の持ち主
舞台登場時にマイクに顔を近づけ低音ボイスの「麒麟です」がおなじみの漫才コンビ川島君と田村君の「麒麟」。在学中は一人でやっていた川島君に、「いい声をしてたな……」というぐらいしか印象が残っていませんでした。
後にコンビを組んでM―1では第1回大会から6回大会まで5回も決勝に進んで人気、実力共に不動のものにした2人。私が若手の劇場「baseよしもと」でネタを見るようになったのは実は05年のM―1の最終決戦で麒麟が演じた「ファッションショー」のネタを見たのがきっかけでした。川島君のボケの司会者の言うことに従って田村君が振り回される、麒麟らしいおもしろいネタでしたが“モデル”の田村君が一回一回、登場する立ち位置まで戻るのを見て、時間の使い方が「もったいない」と感じたのです。「モデル田村」の登場シーンが4回か5回あり、スタートの立ち位置に戻る部分の繰り返しが気になりました。M―1は4分間ですから、10秒程度でも貴重です。10分ネタ中の10秒は緩急をつける時間として有効かもしれませんが、4分ネタの10秒は大きなタイムロスになる。極端に言えば、ボケのチャンスを2つ3つ犠牲にしているとも言えるわけです。実力が均衡している者同士の勝負の時にはいかに削り込めるかがカギになります。この時のネタを見て、私は若手担当の責任者に「baseよしもとの子たちを指導させてほしい」と頼み込んで、それまでは時間に余裕のある時にしか見られなかった若手のネタを仕事として、多い時には年間300日近く見ることになりました。