山口洋子と姫のホステスたちはキックボクシングに熱狂
後年「銀座の高級クラブ」と称された「姫」だが、少なくともこの時代までは庶民的な雰囲気があったという。事実、マダムの山口洋子自身、発展途上の若い作家や役者、芸術家に「お金のことは気にしなくていいから、遊びにきて」と声を掛けていたことは多くの関係者が証言している。サロンのような雰囲気をつくりたかったのかもしれない。
「ママごめん、今日はもうお金がない」と言う若い画家に「大丈夫よ、あそこの呉服屋の社長にツケといてやったから。今月だけで、あいつの店で2つも着物を新調してやったんだからさあ」と言ったことも、しばしばあったらしい。
TBSテレビ運動部副部長の森忠大はこの頃、「姫」によく顔を出していた。テレビマンにとっても若くて美人が揃っていて気軽に飲める「姫」は、他の銀座の老舗店より通いやすかったのである。
新番組「YKKアワー・キックボクシング」のプロデューサーだった森は、仕事上でも洋子と接点を持っていた。この時代、他局に先んじて「番組宣伝課」を立ち上げていたTBSは、今でいう「番宣」を盛んに行っており、特に新番組はその対象だった。