飯野矢住代誕生秘話<4>母親の要求に山口洋子は「わかりました。ウチも倍の金額を支払います」
なんとか着地点が見えかかったとき、母親は「実は、銀座の他の店からもお誘いがあるんですよ」と切り出した。「契約金は倍の200万円」と付け加えることも忘れなかった。
洋子は「わかりました。そうでしたら、ウチも倍の金額を支払います。お給料も配慮させていただきます」と母親の要求をのんだ。自伝にはミス・ユニバース世界大会の渡航費の件は出てこないが、おそらくそれも含んでのことだろう。ともかくこの瞬間、ミス・ユニバース日本代表の一流モデルが、「姫」のホステスとして働くことが決まった。前代未聞である。
話がまとまった頃合いを見計らって、飯野矢住代本人がひょいと顔を見せた。
「おや、矢住代、どうしたんだい?」
「うん、いっぺん帰って来たんだけど、何だか難しそうな話をしていたから……」
その後のことを山口洋子はこう書く。
《あと詳しいことはあらためて支配人を参上させますので、どうもお邪魔いたしました。早々に玄関を出た私のあとを矢住代が送ってくるふりで迫ってきた。