<54>定宿にしていた大阪のホテルが経営難で変貌…ネットも有料に
「そうですか。そりゃあ、良かったですね」
気持ちの入らない相づちを打つマコやんの様子を斟酌することなく、ドン・ファンのミス・ワールド礼賛は続いた。
10時を過ぎ売店が開いたので、3人で向かった。
「それを10個と、こっちも10個、それも下さい」
ドン・ファンは手あたり次第という感じで、一体何十個のケーキを注文したのだろうか? あきれるばかりの買い方だった。
「イブのショックを引きずっているかと心配していたんだけど、杞憂のようだね」
「ミス・ワールドに夢中で助かったわ」
マコやんがハンドルを握るベンツは快晴の紀州路を快調に田辺に向かい、ドン・ファンは後部座席で寝息を立てていた。(つづく)