飯野矢住代誕生秘話<18>世間に求められるがままの「虚像」を忠実に演じていたのか
ともかく、マスコミは矢住代を放っておかなかった。「週刊女性」(1970年10月3日号)は「別れてよかった 若すぎたゆえの破局」と銘打った特集記事を組んでいる。「別れた理由は?」という月並みな質問に「私たち、強くなるために結婚したの。それで、強くなったから、それぞれの道へ飛んで行くことにしたの」と、またも掴みどころなく答え、かと思えば、「結婚してよかったと思うわ。おいしいもの、お洗たくしたきれいなもの、それを彼のために作ってあげるよろこび。私は結婚して、はじめてそれを知ったんですもの」と、実際は未入籍だったにもかかわらず、「結婚」を強調しながら気丈に振り返ってもいる。その心情は次のコメントからもうかがえる。
「イヤなことは、頭のこっちがわにあるの。そして、こっちがわの頭で、いつも夢を見ているの。うん、イヤなこと忘れてはいません。でも、思い出さない。自分に必要なときだけ、パッと思い出すの」
さらにこうも言う。
「花屋さんにある菜の花をね、ぜんぶ買ってしまうの。それを胸にかかえて、そして、風が強い日に、頭の地まで風が吹きとおるような日に、長い髪をこう吹きなびかせて、街を歩くの。私、そんなときが、最高に幸福なの……」