飯野矢住代誕生秘話<16>金子ノブアキ、KenKenの異母兄は生きていたら52歳に
12月22日、午後7時15分、広尾の日赤中央病院(現・日本赤十字社医療センター)で2150グラムの男児を出産した飯野矢住代は、父親となったジョニーに見守られながら再び眠りについた。しかし、喜びも束の間、午後10時ごろ、インターホンから「飯野さんのご家族の方、すぐ看護室に来て下さい」というナースの声がジョニーの耳に届いた。
「お子さんが呼吸困難に陥っています、さっきチアノーゼを起こしたんです。最善の処置はしていますが、助かるかどうか、五分五分です」
生まれたばかりの男児が危篤状態に陥っていた。「容体は一刻の猶予もない」と説明されたジョニーは、そのまま院内で一夜を明かした。しばらくは小康を保っていたが「どう転ぶかわからない」とも聞いた。23日もジョニーと矢住代の母の辰子は、待合室でじりじりとしながら経過報告を待った。
その間、ジョニーも辰子も何度か矢住代とも面会している。当然この件は矢住代の耳に入れなかった。「何かあったの?」といぶかしそうな彼女に、「ううん、別に何もないよ。余計なことを考えないで今はゆっくり休んで」とジョニーはシラを切り通した。矢住代はこくりとうなずくと再び眠りに落ちた。