飯野矢住代誕生秘話<15>予定日より2カ月も早く出産…男児は呼吸困難に陥り重篤な状態に
12月22日、夕方。高田馬場のスナックに出勤しようとしていた飯野矢住代を陣痛が襲った。予定日は2月26日。2カ月も早く産気付いたのである。同棲相手のジョニーに連れられ、広尾の日本赤十字社中央病院(現・日本赤十字社医療センター)に駆け込んだ。
円山町に住む矢住代の母、辰子のもとに、ジョニーから連絡が入ったのは午後5時40分。驚いた辰子は、たまさか一緒にいた「週刊平凡」の記者と日赤中央病院に向かった。
《ときおりスチームが音をたてる、人けのない待合室に、ひとりジョニィがいた。長椅子にかけたままうずくまり、なにか祈っている。
7時15分、「飯野さん、おめでとうございます。男の赤ちゃんです。母子ともに健全です」…看護婦の声だ。抱きあうように喜びあう辰子さんとジョニィ》(「週刊平凡」1970年1月15日号)
ナースが分娩室から赤ん坊を抱いて出てきた。2150グラムの小さい赤ん坊を見て「ホラ、泣いてるよ。おサルさんみたいだ。しつけは、おっかさんに任せるよ」と言うジョニー。「わたしゃダメだ。あの子(矢住代)で失敗したんだよ」と返す辰子。そのやりとりを、同行していた記者は耳にしている。