<63>家政婦のドラ子は野崎社長に「2億円を貸して欲しい」と懇願した
「そやろ? 貸してくれなかったら自殺しますって泣き落としにかかって、大変や。今、ドラ子はアプリコにいるんやけど、掃除も中途半端なのに、今日のお手伝い分の日当2万円をくれとも言いだして」
「2万円? (お手伝いの)大下さんよりも多いじゃないですか。体だけじゃなくて神経も随分と太いんですね」
なんだ、この日は? 電話を切って呪われているんじゃないかと思った。
かんぽの宿にはマコやんと一緒に行くことになり、夕方ホテルに車で迎えに来てもらった。
「どうですか? ドラ子問題は片付きましたか?」
助手席に腰掛けて聞いた。
「経理の佐山さんがお手伝い分を支払った。佐山さんは用事があるから宴会を欠席するけど、ドラ子をJRの紀伊田辺駅へ送って行くって」
「しかし、昼の2人組といい、ドラ子といい、考えられないような日ですね」
「そうや、不思議な日やなあ~」