<63>家政婦のドラ子は野崎社長に「2億円を貸して欲しい」と懇願した
イブの偲ぶ会まではまだ時間があったので、私はホテルに戻ってパソコンで原稿を書いていた。しばらくすると携帯が振動し、番頭格のマコやんの名前が表示された。
「お疲れさまです。どうしました?」
「どうもこうも、ないんやで~。あのドラ子な、お手伝いをしに来たんじゃないって言いだしたんや」
「はあ?」
「社長に借金を申し込もうと思って来たんだって」
「借金? そんなこと一切、口にしていなかったじゃないですか。一体いくらなんですか?」
「それが笑ってしまうで~、2億円やって」
「エ~、2億円!?」
思わず声が大きくなった。
■担保はなし
「担保は何ですか?」
「それがな、なしで貸してくれって。それを聞いた社長が怒りだしてな」
「そりゃあオレでも怒りますって。ムチャクチャじゃないですか」