<65>早貴被告は2億円を無心に来た家政婦のドラ子に「可哀想」と同情した
20畳ほどの宴会場の中央に黒い机が置かれ、両側に5人ずつが椅子に腰掛けられるように配置してあった。野崎幸助さんと早貴被告が一番奥で、私とマコやんがその向かい、残りは従業員4人と造園会社の若社長である。
「それにしても不思議な日でしたね」
社長との会話が始まった。
「例のお手伝いさんはお金を借りに来たんですって?」
「そや。2億円を貸してくれって言いだしたから呆れて怒ったよ。担保もないのに」
「信じられませんよね」
「貸してあげればよかったのに」
早貴被告が口を挟んだ。
「借りることができなければ自殺するって言っているんですよ。1億円なんか紙切れって社長は豪語しているんだから、貸してあげればよかったのに」
「キミは自分の金じゃないからそう言うのであって、担保もない『貸して』は『ちょうだい』と同じなんだよ」