<84>寝込みを襲った真夜中の家宅捜索…腕にはくっきりと指の跡が残った
「早貴ちゃんは逮捕されるのかなあ」
野崎幸助さんが亡くなった翌日の夜、早貴被告が警察に連れていかれた後で家政婦の大下さんがポツリとつぶいた。私はドン・ファン宅に前から置いてあった自分用の麦焼酎を炭酸で割って飲みながら彼女と話をしていたが、早貴被告が帰ってくる節がないので、そのままリビングで休むことにした。
2017年2月に強盗がリビングのガラス窓を割って侵入した後、野崎さんの自宅に半月以上泊まり込んだことがある。その時と同じように応接ソファを2つくっつけて、簡易ベッドをつくった。
大下さんは玄関脇の20畳ほどのゲストルームを自室にしていたが、そこにはキングサイズのベッドが置かれていた。
東京から寝ずに移動してきた疲れがたまっていたからだろう、私は横になった瞬間に眠りに落ちた。
「おい、起きて、おい」
体が揺すられるような気がして目を開けると、知らない白いシャツの若い男が私をのぞき込んでいる。一瞬強盗かと思ったが、自分がどこにいるのか、何をしているのか、とっさには分からず寝ぼけていた。