五木ひろしの光と影<15>山口洋子は「今までになかった曲にしたい」と訴えた
「沢村忠に真空を飛ばせた男」を上梓するにあたって筆者は、銀座のクラブ「姫」に足しげく通った多くの関係者に話を聞いた。その際、彼らは「2階にカフェがあってねえ」と幾度となく口にした。
「カフェってなんですか?」
「姫の2階にさ、カフェがあったんだよ」
それによると1階のフロア(写真)の端の階段を上ると中2階にカフェがしつらえてあったという。そもそもは、1階のフロアが満席のとき待ってもらうためのものだったが、程なく音楽関係者や出版関係者との打ち合わせの場となり、時には山口洋子自身が原稿を書く書斎にもなった。「詞を書いたから見てほしい」と山口洋子から連絡を受けた平尾昌晃も、このときはいつもの華やかなフロアではなく、まずこのカフェに出向いた。「話が終わったら1階に下りていくらでも遊んでいいから」とマダムは言った。