<161>遺言無効裁判の第1回口頭弁論で和歌山市へ…記者の入れ替わりを憂う
翌朝、裁判所の前には20~30人ほどの報道陣が待ち構えていて、渥美・松永両氏が裁判所に入る姿をテレビカメラに収めていたが、この日は書類の受け渡しだけだったので、10分もしないで終了した。その後、裁判所前で記者たちの囲み取材がなされて、マスク姿の渥美・松永クンは堂々と自分たちの主張を述べたので心強かった。まぁ、心臓に毛が生えているような2人なので、私は安心してその様子を眺めていた。
「吉田さん、お久しぶりです。その節はお世話になりました」
NHKの若い報道記者が挨拶にやって来た。わずか2年前の事件だったのに、裁判所に集まった記者の中で田辺市内の現場に来ていたのは1人だけであった。記者の転勤が多いのは知っているが、これでは事件を地道に追っていく人材がいなくなるのではないかと残念な気持ちになった。
裁判所内でマスコミ各社の記者さんたちと名刺交換をしていると、私のことをドン・ファン事件後に追っている取材記者であると思い込んでいる記者もいたので驚いた。
たしかに私は取材記者であるかもしれないが、ドン・ファン事件では当事者の一人になっていることを認識していない記者がドン・ファン事件を理解していけるのか、不安になった。たぶん日本の犯罪史上、私のような立場の記者はいなかったと思う。私が仕掛けたワケでもないのに次から次へと遺言のウソとか過払い金返還の不正とかが起きたのだから、信じられない思いで対処してきただけなのだ。 =つづく