<162>弁護士との共闘に向けられた記者たちの不思議そうな視線
「吉田さん、大丈夫ですか?」
野崎幸助さんの遺言無効裁判の第1回口頭弁論が終わった後、私と渥美・松永両弁護士の3人は、裁判所裏の駐車場に止めていたレンタカーに乗り込んだ。その様子を記者たちが見ていたので、渥美弁護士が心配そうな顔で聞いてきた。なんで2人が私の運転する車に乗るのかと不思議そうにしている記者たちの視線が刺さってきた。
「もう、気にする必要もないさ」
私はドン・ファンの遺産に手を突っ込むやからを排除しようと動いていたが、その裏に2人がいることを隠してきた。それは対立する弁護士たちに警戒されないようにするためであったが、すでに遺言無効やFさんへの過払い金不正について渥美弁護士らが代理人となっている訴状が出ていたので、今さら隠す必要がない。
「喧嘩の準備は整ったんだ。オレは記者であるけれど当事者でもあるから、不正を許すことはできないという立場さ。さぁ行こう」
和歌山市からは高速道路を使ったので、約束となっている午後1時よりも前に余裕で田辺市内に到着した。