「鎌倉殿の13人」足立遠元役・大野泰広さん「俳優を極めたい、地域の短編ドラマ100本を作りたい」
大野泰広さん(俳優・45歳)
好評のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では13人のひとり、足立遠元を演じている大野泰広さん。お笑い芸人から俳優に転向し、三谷幸喜氏の大河は2016年の「真田丸」に続き2作目。これからやりたいことを聞いた。
◇ ◇ ◇
「鎌倉殿の13人」で演じている足立遠元は現在の埼玉県鴻巣市や桶川市から東京都足立区にわたる広い一帯を治めていた武蔵の豪族です。源頼朝の御家人として仕え、その後は13人の合議制のひとりとして幕府の重臣になります。
「鎌倉殿の13人」の制作が発表された時は「鎌倉殿の130人」くらいの中に入れたらラッキーだと思っていましたが、まさかまさかの13人入り。三谷さんやスタッフさんにはとても感謝しています。
今作では御所内のコンシェルジュのような役割を担っています。役作りとしては史実に残っている資料が多くない方なのですが、文武両道で当時としては珍しく、読み書きができたということから幼少期からきちんと教育を受けた品格のある人物で、頼朝にも頼りにされていたということは、源氏への貢献度も高く忠誠心も強かったのだろうと想像し、所作などからこだわって演じていきました。
今のところ、監督や三谷さんの反応もよくて少しホッとしています。原作といわれる「吾妻鏡」では1207年の記述を最後に表舞台から姿を消しているのですが、今後はどのように13人に入り、最後まで描かれていくのか楽しみです。ちょこちょこ登場しますので見つけてください(笑)。
■最後は「俳優、やりっきたなぁ」と笑って言いたい
やりたいことの一つは「俳優」を極めたいですね。俳優の仕事は死ぬまでやめないと決めているのですが、やってもやっても満足しないので楽しいです。「あいつと芝居すると楽しい」って言ってもらえる、そんな俳優になっていきたいですし、最後は「俳優、やりきったなぁ」って笑って言いたいです。
そのためには演技はもちろん殺陣や乗馬や語学など磨けるものは地道に磨き続けて、舞台やドラマ、映画にもたくさん呼んでもらえるようになっていきたい。いずれは海外の作品にも挑戦するチャンスをもらえるような俳優になりたい。まずは三谷さんの舞台にも呼んでもらえるように頑張ります。
ユーチューブで手作り作品を配信中
もう一つは僕なりの「地域ドラマ」の映像制作です。元々お笑いの頃からネタを書いていたこともあって、「ものづくり」が好きで脚本や演出のお仕事もさせてもらっていたのですが、5年ほど前から荒川区・文京区・千代田区で放送されている「あらぶんちょ!」というケーブルテレビの制作にも携わっています。今は区民のみなさんの知りたいことを代行調査する「あなたの知りたい!検索します」という番組を担当させてもらっています。今風に言うと俳優と裏方の二刀流です(笑)。
きっかけはドラマの脚本を書かせてもらった時に映像の作り方をもっと勉強したい! と思っていました。そんな時、20代からリポーターとしてお世話になっていた「あらぶんちょ!」のスタッフさんから「だれかADやりたい人いない?」と連絡をもらった時に「映像制作が学べるなら、僕が!」と自ら飛び込みました。
僕自身も荒川区出身で地域密着の番組なので、いろいろなお店の方や地域活動をしている方たちと出会えるので楽しくやらせてもらっています。地域に関わっていく中で自分なりに俳優や芝居の経験をもっと生かせないかなと思っていました。そんな頃、NHK宇都宮放送局で地域を舞台にした朗読劇の脚本を書く機会をいただいたのですが、そこでまた貴重な体験をしまして。
終演後、物語のモデルになった地元の方が「俺たちが伝えたかったことを形にしてくれてありがとう!」ってとても喜んでくれた。その時「これだ!」と思いました。地域ドラマなら芝居で地域とつながれると。
今年「kimagure studio」というユーチューブチャンネルを立ち上げ、「ストーリーズ」という映像制作企画をスタートしました。これは地域×お店×俳優でつくる短編ドラマです。
地域にはいろいろなお店があって、取材するとそのお店には必ず「物語」があります。机の上だけで考えていたら絶対思いつかないようなステキなドラマが。
それを原作に僕が脚本を書いてお店の人とプロの俳優に演じてもらい、撮影・編集は僕がやる。毎回そのお店ならではの短編ドラマが出来上がります。
この企画のお約束として、お店の人に出演してもらうのですが、意外だったのがお店の人がとても自然ないい芝居をするのです。素人さんの演技がめちゃくちゃいい瞬間がある。これは楽しい発見でした。
まずはこの短編ドラマを100本作るのが目標。東京だけじゃなく日本全国のいろいろなお店や特産品などに出合いながら、そこにしかない地域ドラマを作っていきたいです。これはお金儲けが一番の目的じゃないのでライフワークとして地道に「ものづくり」を楽しんでいきます。気軽にお便りください(笑)。
(聞き手=浦上優)