横浜ベイの強打者だった“松坂世代”古木克明さん 内装工事後に少年野球の教室まで猛ダッシュ

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古木克明さん(元横浜ベイスターズ選手/41歳)

 球春到来! 3月25日にプロ野球のペナントレースが開幕した。今回登場の古木克明さんは1998年のドラフト1位指名で横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団したいわゆる「松坂世代」(1980年生まれ)である。2002年シーズンの終盤に頭角を現し、翌03年には開幕からスタメン起用で22本塁打を記録。さらなる飛躍が期待されたが、その後は伸び悩み、09年オフに戦力外通告を受けた。今どうしているのか。

  ◇  ◇  ◇

■平日は内装工事の後に少年野球の指導

「最近は、平日の朝から夕方にかけては、内装工事の仕事をしているんですよ。壁紙の張り替えやエアコンの取り付け、流し台や浴槽の交換など、今は一通りのことはできるようになりましたね。夕方、工事の仕事が終わったら電車に飛び乗り、今度は、子どもたちに野球を教えるため野球教室に向かうんです。毎回、時間ギリギリなので、駅から野球教室までは猛ダッシュ。いいトレーニングになっています(笑い)」

 古木さんは内装工事の仕事をしながら、JR大船駅西口から徒歩15分の場所に「The Baseball Surfer」を開設し、地元の野球少年たちを指導しているという。

■「結果ばかりを追い求め、自己分析ができていなかった」

「僕は現役時代、ホームランや長打にこだわりすぎてしまって、さらに結果を残さないといけないという重圧から余計に打てなくなってしまうという負のスパイラルに陥ってしまいました。結果ばかりを追い求めてしまって、客観的に自己分析ができていなかったんです。だから、僕はプロ野球選手としては短命で終わったんだと思います。そういう経験をもとに、子どもたちに打撃指導を行っています。バッティングってちょっとしたきっかけで飛躍的に良くなるんですよ。まだまだ、伸びしろがある小・中学生はなおさらです。悪いところを指摘してアドバイスしたら本当にみるみるバッティングが良くなるんですね。そして、次に教室に来たときに目を輝かせて『日曜日の試合でヒットが打てた!』という報告があったり。子どもたちに教えるのは本当に楽しい」

トライアウトは計6回受けるも復帰はかなわず

 野球の魅力について笑顔で語る古木さんだが、現役時代は20代の若さで戦力外を通告。失意の中、プロ野球のユニホームを脱ぐことに……。

「僕たちの学年は『松坂世代』と呼ばれ、多くの選手が各球団で主力として活躍しました。でも、僕自身は周囲の期待を裏切ってしまったという挫折感もあって、野球から距離を置きたいという気持ちがありました。そんなときに格闘技のオファーがあったんです。当時28歳。格闘技はまったくの未経験でしたが、体力には自信はあったのでチャレンジしたのですが、練習初日で畑違いのところに来たと思いましたね。当然なんですけど、野球とは勝手が違い、いい成績を残すことはできませんでした」

 自分が生きる道は野球しかない。古木さんは、プロ野球界への復帰を目指すことを決意し、11年11月にNPB合同トライアウトに参加。しかし獲得に名乗り出る球団はなかった。

「トライアウトは計6回受けましたが、結局、復帰の夢はかないませんでした。実は復帰を目指す中で、13年に米独立リーグのハワイ・スターズに入団して1年間プレーしたこともあります。現地では安アパート暮らしで、ハワイで試合が終わった直後に、次の試合場所のサンフランシスコに移動するなど大変なことも多かったんですけど、日本の野球とは違う“Baseball”の醍醐味を肌で感じることができました」

 ハワイから帰国した古木さんは事業構想大学院大学に入学し、アスリートのセカンドキャリアを研究するなど、ビジネスの基礎を学んだ。また東日本大震災の被災地をスポーツを通じて支援する活動にも従事。そして14年に「The Baseball Surfer」を起業する。今後の目標について聞いた。

「年々、野球の競技人口は減少していて、おじさんが見ているダサいスポーツというイメージもありますよね。でも、僕は、やり方次第では野球の魅力や楽しさをもっと多くの人たちに知ってもらい、野球人口の裾野をもっと広げていくことはできると思っている。いまは新しい家族ができて毎日楽しく暮らしています。一家の大黒柱として妻と子どもと幸せな毎日を送るためにも、最近始めた内装工事の仕事は今後も続けていこうと思っています。サラリーマンの方も年功序列や終身雇用が崩壊し、転職や副業も当たり前の時代ですよね。僕たちのような個人事業主は、ダブルワーク、トリプルワークでいろんな仕事を掛け持ちしておいたほうが、何かあったときの備えになりますからね、ハハハ」

(取材・文=大崎量平)

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