市川猿之助が「新・陰陽師」でリベンジ! 娯楽大作に徹し場面ごとに沸かせていく
10年前に歌舞伎座が新開場したときに、最初の新作として上演されたのが『陰陽師』で、当時の人気花形、幸四郎・團十郎・松緑・菊之助・愛之助・勘九郎・七之助らが総出演した。
華やかで熱量もあり、「これからの歌舞伎座は俺たちがつくる」という気迫に満ちた公演だった。だが、同世代の人気役者のなかで、猿之助は出演しなかった。
その猿之助が、今月は『新・陰陽師』で脚本・演出を担い、もちろん自身も出演する。彼にとってのリベンジとも言える。
陰陽師・安倍晴明を演じる中村隼人をはじめ、市川染五郎、坂東巳之助、中村児太郎、中村壱太郎、尾上右近、中村福之助、中村鷹之資ら、猿之助が見込む若手が勢揃い。いずれも猿之助がこれまで自分の責任公演に起用してきた若手だ。
夢枕獏の小説が原作となっているが、オリジナル脚本と言っていい。さまざまな古典歌舞伎のシーンやセリフが引用されている。これまでの猿之助の新作にあった、テーマ性はなく、娯楽大作に徹しているのがいい。
タイトルロールの隼人も含めて、若手それぞれに見せ場を作る群像劇で、ストーリーとしての面白さというより、場面ごとに沸かせていく作り。猿之助の出るシーンも少ないが、最後は唐突に宙乗りして、いわば、全部持っていく。