青春ドラマ「俺たちの旅」の普遍的魅力とは 昭和は遠くなりにけりだが…ドラマは永遠
1年間のオンエア中、中村と田中は撮影後に飲み明かして、翌日中村が遅刻を繰り返していたそうだ。冒頭の噴水シーンが、実は撮影許可を取らずに行われたものだったといい、今ではあり得ないような話で盛り上げた。構成作家のチャッピー加藤氏が言う。
「このドラマの何がいいかというと、登場人物が若大将みたいなスーパーマンじゃないんですね。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(秋野太作)は揃いも揃って落ちこぼれ。社会と折り合いがつかず、カースケはせっかく就職した会社をさっさとやめちゃったりする。楽しくもない仕事をしていくなんて、一度の人生そんな生き方はしたくないって。多くの若者の心にこの言葉は響いたと思います。それで『なんとかする会社』という、要はよろず請負の便利屋をやるんですけど、難題ばかりで儲からない。それでも気ままで楽しく自由なんですね」
オメダの妹真弓役の岡田奈々の可愛さ、バスケ部マネジャー役の金沢碧の美しさも、若者視聴者の目をくぎ付けに。岡田の歌った挿入歌「青春の坂道」もヒットした。
「カースケたちが住んでいたアパート『たちばな荘』は、実際に存在したんです。ドラマでは井の頭公園のそばでしたけど、実際の場所は方南町なんですよね。残念ながら2014年に取り壊されてしまい、昭和の遺産がどんどん消えていきますが、ドラマでは永遠です」(同)
夢はたとえかなわなくても、それを追うことに意味がある。そんなメッセージといい、中高年世代になった視聴者を今も元気づけているのかも知れない。