和田靜香さんの作品群は昭和・平成・令和の時代のスケッチとして読み継がれていく
コロナ禍の2021年、日本の政治について綴られた2冊の長いタイトルの本が出版されて話題を集めた。『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』と『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』。地べたの視点から読みやすい文体で書かれたこの2冊は、いずれも1965年生まれのライター和田靜香さんによるもの。
大島新監督の『なぜ君は総理大臣になれないのか』で全国区の知名度を得た国会議員・小川淳也との問答集という性格を備えた『時給はいつも──』、その小川さんの選挙戦に密着取材した『選挙活動』は累計3.6万部に達したというから、政治をテーマにした書籍としては破格のヒットだ。
投稿が認められて20歳で音楽評論家・作詞家の湯川れい子さんの秘書を務めることになった和田さんは、90年代にはフリーの音楽ライターとして大きな飛躍を遂げた。そのころ同じ音楽ライターとして同じ雑誌(「ミュージック・マガジン」「週刊SPA!」など)に寄稿していたぼくは、面識こそなかったものの、いつも熱を感じさせる個性的な筆致の主として彼女を知った。