著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

和田靜香さんの作品群は昭和・平成・令和の時代のスケッチとして読み継がれていく

公開日: 更新日:

 パリテの取材か。それなら和田さんらしいとぼくも納得した。フランス語で「同等・同量」を意味する「パリテ」は、「パリテ法」という言葉のなかで使われることが多い気がする。フランスで2000年に制定された、男女平等の政治参画を促す法律である。以後20年でフランスの国会では女性議員はおよそ4倍に増えたというから、効果のほどは実証済み。とはいえ日本にいると、今ひとつその現状も効果も推し測りにくい事象でもある。それなのに大磯町では20年も前からパリテ議会が実現しているというのだ。寡聞にしてぼくは知らなかった。

 今月ようやくその取材をまとめた本が出た。今回もタイトルは長いよ。『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと(略して「遅フェミ」)』。ごくごく飲めてしっかり浸透もする経口補水液のごとき和田さんの語り口は、ここでも絶好調。ひと晩で読み終えた。

 大磯町で出会った人びとを語り、わが行く末を案じ、来し方をふり返る。師・湯川れい子への真っすぐだけではない思いを吐露する。そして何といっても、山内マリコさんの小説を引用しながらさりげなく織りこまれた和田さんのお母様の話が泣かせる。ぼくは号泣しましたですよ、はい。

 これからの人生で和田さんはいったいどれほどの数の本を出すのだろう。どんなテーマで、どんな手法で書かれようと、その作品群は昭和・平成・令和の時代のスケッチとして、もちろんひとりの女性が生きた証として、長く読み継がれていくことを確信した。林芙美子のように。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇