和田靜香さんの作品群は昭和・平成・令和の時代のスケッチとして読み継がれていく
パリテの取材か。それなら和田さんらしいとぼくも納得した。フランス語で「同等・同量」を意味する「パリテ」は、「パリテ法」という言葉のなかで使われることが多い気がする。フランスで2000年に制定された、男女平等の政治参画を促す法律である。以後20年でフランスの国会では女性議員はおよそ4倍に増えたというから、効果のほどは実証済み。とはいえ日本にいると、今ひとつその現状も効果も推し測りにくい事象でもある。それなのに大磯町では20年も前からパリテ議会が実現しているというのだ。寡聞にしてぼくは知らなかった。
今月ようやくその取材をまとめた本が出た。今回もタイトルは長いよ。『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと(略して「遅フェミ」)』。ごくごく飲めてしっかり浸透もする経口補水液のごとき和田さんの語り口は、ここでも絶好調。ひと晩で読み終えた。
大磯町で出会った人びとを語り、わが行く末を案じ、来し方をふり返る。師・湯川れい子への真っすぐだけではない思いを吐露する。そして何といっても、山内マリコさんの小説を引用しながらさりげなく織りこまれた和田さんのお母様の話が泣かせる。ぼくは号泣しましたですよ、はい。
これからの人生で和田さんはいったいどれほどの数の本を出すのだろう。どんなテーマで、どんな手法で書かれようと、その作品群は昭和・平成・令和の時代のスケッチとして、もちろんひとりの女性が生きた証として、長く読み継がれていくことを確信した。林芙美子のように。