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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

潜水艦映画に“ハズレなし”! 「沈黙の艦隊」が描く緊迫する世界情勢のリアル

公開日: 更新日:

 10月7日早朝、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム過激派組織ハマスが突如イスラエルを攻撃した。撃ち込まれた数千発のロケット弾にイスラエルの防空システム「アイアンドーム」は太刀打ちできず、境界線を越えて侵入したハマス戦闘員は音楽野外フェスを襲撃、参加者を無慈悲に虐殺し、居合わせた外国人を含む100人を超える市民を拉致した。

 反撃に出たイスラエル国防軍はガザ地区を空爆、現在までの死者は双方合わせて2800人を超えている。モサドやアマン(国防軍参謀本部諜報局)を擁するイスラエルが完全に虚を突かれた形だ。米バイデン政権が推進してきたアラブの盟主サウジアラビアとイスラエルの国交正常化交渉に暗雲が垂れ込めただけでなく、ハマスの背後には核開発疑惑のイランがいる。イスラエルは核兵器保有国だ。憎悪と恐怖の応酬が第5次中東戦争を招きかねない悪夢に世界はおののいている。

 どうすれば戦争を抑止できるのか。この問いに正面から取り組んだのが、1988年から96年にかけて「モーニング」(講談社)に連載された漫画「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ作)だ。米国と合同で極秘開発された日本初の原子力潜水艦「シーバット」の試験航海中、海上自衛隊の海江田四郎艦長が反乱を起こす。潜水艦を「やまと」と改め独立国家を宣言するという奇想天外なストーリーは、冷戦崩壊前後で国際秩序が混沌としていた当時、熱狂的に受け入れられ、コミックの累計発行部数は3200万部に達した。

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