故・木川かえるさんが漫画家を諦めた理由「手塚治虫の描いてるのを見せてもろたら…」
長身でベレー帽に大きめのサングラスがトレードマーク。関西の方なら私と同じ60代はもちろん50代の方でも「ジャズ漫画」として舞台に立たれていた木川かえるさんを覚えていらっしゃるでしょう。
滋賀県近江八幡市のご出身で今年の夏には、生誕100年を記念して回顧展も開かれていました。漫才でもコントでもない。ジャズや映画音楽をBGMにお客さんから下の名前をもらい、たとえば「めぐみさん」なら、「めぐみ」というひらがな3文字を模造紙にランダムに書かれて、その字を起点にして浴衣姿で花火をしている様子やこたつでみかんを食べている様子など季節に合わせたちょっと艶っぽい女性の“漫画”を即興で描き、最後に照明を落として蛍光塗料が入ったインクで描かれた絵をきれいに浮かび上がらせ、満場の拍手。名前を言ってもらった女性にその絵を「良かったらお土産にどうぞ」と手渡し、そのまま受け取った女性にやさしく笑顔で「礼も言わんな……」と言って笑いを誘っていらっしゃいました。
初めてかえる師匠の舞台を見た時には「寄席にはこういう方もいらっしゃるんだ」と感心したものです。