尾上松也「魚屋宗五郎」は10年の集大成 リーダーとしての資質も確か

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 正月の歌舞伎は4劇場。尾上菊五郎劇団の公演は新国立劇場に移り、規模が縮小されたためか、尾上松緑、尾上右近などは歌舞伎座へ移った。歌舞伎座は、前年まで出ていた市川猿之助が不在なので、その穴を埋められるかが焦点。

 松緑が自ら企画した、講談を原作とした忠臣蔵外伝の『荒川十太夫』は、2022年に初演され、好評だったので再演となった。だが、初演時に猿之助が演じた堀部安兵衛が中車に替わったため、印象がだいぶ異なる。猿之助の不在は、スーパー歌舞伎などの新作よりも、こういう演目のほうが影響が大きい。

 北條秀司作『狐狸狐狸ばなし』は、ブラックな喜劇。市川染五郎は間の抜けた男の役で、美少年の無駄遣いと思わせておいて、大逆転し、喜劇の才能を見せる。

 新橋演舞場は市川團十郎による『平家女護嶋』。前半の「鬼界ケ島の場」では、團十郎の俊寛はけっして「老人」ではない。ラストも絶叫し嘆き悲しみはしない。船を見送るのは、未練ではなく、若い者たちへの「生きていけよ」という激励と感じさせる。

 後半が200年ぶりの上演という「朱雀御所の場」で、それをさらに、新之助とぼたんが演じるのにふさわしいように書き換えている。ラストの大雪で劇場全体が清涼感に包まれる。

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