キム兄こと木村祐一さんと語り尽くす 昭和・平成・令和の「芸人世代論」
芸人は今後、小粒化していくのでは…(木村)
原田 先輩、後輩の関係性も変わってきました?
木村 希薄になってきているかもしれませんね。芸の世界の決まり事もそこまで厳しくなくなってきたと思います。先輩を「兄さん」と呼ぶとか、舞台に出る前に「お先に勉強させていただきます」と挨拶するとか。
原田 新喜劇やNGK(なんばグランド花月)などに出ている師匠の中には厳しい方もいましたか?
木村 昔は師弟関係があったので、自分の弟子には厳しくしつけましたが、今は養成所という学校になってしまった。先輩、後輩の関係性は薄まってきた気はします。
原田 ちなみに、唐突ですがキム兄さんは芸人を辞めようと思ったことはあるんですか?
木村 うーん、芸人って職業じゃないんですよね。芸人って生き方、概念なんです。だから、辞めるとか辞めないとかではない。自分が芸人だと思う限り、芸人は芸人です。
原田 では今後のお笑い界はどうなっていくと思われますか?
木村 テレビに限って言うと、今でもやっぱり注目される芸人はどんどん変わっていっています。フロントに出る芸人を目指して、下には無数の若手がギューギューに待機している。若いディレクターやプロデューサーは、自分と一緒に面白い番組を作ってくれる若手芸人を躍起になって探してますし、そうなってくれないと、新しいものって作れないですしね。
原田 地上波以外のメディアも増えていく中、誰もが知るような人気芸人って今後出てくるんでしょうか。
木村 言い方が悪いかもしれませんが“小粒化”していくんじゃないかなと。人の好みごとにコンテンツは細分化していますからね。本当に世間を席巻するようなカリスマ芸人は10~20年に1人出てくるかどうかってところですね。
原田 本日は貴重なお話をありがとうございました!
(構成=高田晶子)
▽木村祐一(きむら・ゆういち) 1963年、京都府出身。吉本興業所属。86年、お笑いコンビ「オールディーズ」としてデビューし、翌年にはNHK上方漫才コンテストで最優秀賞を受賞。90年からピン芸人として活動。94年には拠点を東京に移し、構成作家、俳優、映画監督としても活動。料理愛好家としても知られる。
▽原田曜平(はらだ・ようへい) 1977年、東京都出身。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。著書に「Z世代」「シン世代マーケティング」「超バズテク図鑑」など。芝浦工業