正月早々暴力団にレンガで襲撃された鶴田浩二
<1953年1月>
年が明けて間もない6日午後8時30分、大阪・四天王寺近くにある旅館・備前屋の2階から、若い女性たちがキャーッと悲鳴を上げながら駆け下りてきた。続いて下りてきた4人の男たちは入り口に止めてあった高級車に乗り込み姿を消した。
2階の部屋には血まみれになって倒れている鶴田浩二(当時28)の姿があった。
その前で一緒に食事をしていた水の江滝子、高峰三枝子らが、呆然と立ち尽くしていた。鶴田は救急車で近くの病院に運ばれて、頭と手を11針縫う応急処置が施された。全治10日間のケガだった。
1時間前まで鶴田は水の江や高峰と千日前・大劇の正月公演「百万ドルの宝船」に出演。ショーを終え、旅館に戻ると、鶴田にサインを求める女性ファンたちが集まっていた。
そのうちの10人ほどを部屋に招き入れると、その一群に紛れて男たちも上がってきたのだった。そのうちのひとりが「鶴田さん、おめでとう」と声をかけながら空のウイスキーボトルで殴りかかった。顔をやられたらまずいととっさに頭を抱えうずくまった鶴田に、別の男がレンガを振り下ろした。